犬は愛情深い動物。友好的な気持ちやあいさつとして。単純においしいニオイがするから…の場合もありますが、愛犬からペロペロされることって日常的にありますよね。飼い主としてはうれしいけど、病気になったりしないか気になったことはありませんか。
犬のお口の中はばい菌がいっぱい。その菌のなかにはヒトにもうつる人畜共通感染症もあります。近年ではペットを大切な家族として室内飼育される方が増え、ペットへの濃厚な接し方が増えたことにより、ペットからヒトへの感染症の患者数が増加傾向にあると報告されています。
人畜共通感染症のなかでも代表的なものを紹介します。
- パスツレラ症
- パスツレラ菌は犬や猫などの口腔内常在細菌で、75%の犬が保菌しています。咬まれたり、引掻かれたりした傷からの感染のほか、過剰なスキンシップなどで感染します。パスツレラ症を発症すると、短時間で受傷部位の腫れや、痛みや発熱がみられ、蜂窩織炎や骨髄炎をおこすこともあります。また、免疫機能が低下している人では、重症化して死亡することもあります。パスツレラ症は動物から人にうつる感染症として、最も患者の数が多い病気と考えられており、発生数が年々増加傾向にあります
- ヘリコバクター・ハイルマニ
- ヘリコバクター属ハイルマニという細菌は1987年にドイツのHeilmannらによって報告された比較的新しい細菌で、犬、猫、ウサギ、ブタなどの胃粘膜組織中に存在し、動物からヒトに感染し慢性胃炎や鳥肌胃炎を引き起こし、胃がんの発症に関与しているとされています。ピロリ菌が陰性でも胃の不調が続いている場合、このハイルマニを疑います。
- コリネバクテリウム・ウルセランス症
- ヒト、犬、猫、牛のほか、様々な動物において感染事例が確認されており、咽喉頭、肺、皮膚、乳腺などに、様々な症状を呈する動物由来感染症です。2016年岡山で犬飼育者が発症2か月後に死亡、同年5月福岡で屋外の猫にえさやりをしていた女性が救急搬送3日後に死亡しています。呼吸器感染の場合には、初期に風邪に似た症状があります。重症化すると呼吸困難になり死亡することもあります。愛犬が咳やクシャミ、鼻水などの風邪様症状、眼脂、皮膚炎、皮膚や粘膜潰瘍などを示しているときは、早めに獣医師の診察を受けましょう
- 犬レプストピラ病
- レプストピラ菌が原因の伝染病で、ネズミなどの野生動物が媒介します。つまり、ネズミがいるところではこの病気が発症する可能性があります。レプストピラ菌に汚染された尿が排泄された川水、下水などの環境で、愛犬が草を食べたり舐めたり水をのんだりすることで経口感染、直接ふれたりすることにより経皮感染します。夏の暑いとき川遊びをしたり、おさんぽ中に水たまりや側溝に入ってしまう愛犬はとくに要注意。
- また人畜共通感染症のひとつで、ヒトは感染した動物の尿などで汚染された川で遊んだり、川水で洗ったりした食物の飲食により感染します。症状は、初期は風邪に似たような症状で発熱、筋肉痛、おう吐、下痢、脱水など。黄疸、歯茎からの出血がある場合も。しかし治療がおくれると尿毒症になり死亡することがあります。川遊び等には注意すること、万一、愛犬がかかってしまったら、食器などの消毒をしたり、糞尿に直接さわらないように手袋を着用して処理するなど注意が必要です。この感染症はワクチンで予防することができます
- 犬ブルセラ症
- ブルセラ(Brucella)属の細菌に感染しておこる人畜共通感染症で、牛、豚、ひつじ、ヤギ、犬、海洋動物に感染します。犬を宿主とする菌はブルセラ・カニス(Brucella canis)で、感染すると、メス犬の場合では流産が多くなるなどの繁殖障害が、雄では精巣や前立腺などに影響がでます。感染していても見た目では感染しているかどうか判断できないため知らない間に感染していたり、集団感染する可能性があります。ヒトが感染すると発熱、発汗、頭痛、背部痛、体力消耗というような風邪ににた症状がだらだら長期にわたってでます。まれに39度以上の発熱、肝機能障害等を起こすこともあります。重症化すると心内膜炎、骨髄炎などの危険もあります。