犬のアトピー性皮膚炎はヒト同様、アレルゲンの特定が難しく、また遺伝的要素や体質による場合も多いので、「完治」させるのは難しい場合が多く時間がかかるようです。アトピーとはギリシャ語の「奇妙な事(atopia)」からきているといわれており、人間のアトピー性皮膚炎と同様、そのアレルゲンとなる原因物質は多岐にわたります。呼吸時にアレルゲンを吸い込むことでアレルギー反応がでます。
とくに問題となるアレルゲンはハウスダストマイト(イエダニ)で、その他花粉、ホコリ、フケ、カビなどを吸引する環境にいること、またストレスなどが複合されて症状が悪化してしまうケースが少なくありません。犬は床に近いところにいるので、わたしたち人間よりそういったハウスダストを吸い込みやすいのです。
主な症状はかゆみで、耳や目のまわり、わきの下、後肢の内側、指の間、背中、会陰部、肛門周辺に症状がでます。ひどくなると全身におよびます。寄生虫や細菌の感染などを併発することがあるので、他の皮膚病と誤診されることもあります。また、他に併発している病気があると治りにくく、あわせた治療が必要とされています。
本来免疫とは、外部から侵入しようとする病原体や異物を攻撃して排除して体内環境を守ろうとする機能のことです。しかし、アトピーの場合は、その免疫反応が異常に強すぎるために、自分の体を傷つけるほどの強いかゆみや炎症をおこしてしまいます。そこでこの免疫反応をおさえる薬を使って治療する代表的な治療というと、ステロイド剤や免疫抑制剤などがあげられます。しかし、これらの薬剤は副作用の問題が指摘されており、いいことばかりではないようです。
近年、副作用のすくない治療としてインターフェロンガンマ療法や減感作(げんかんさ)療法などという治療が注目されています。これは体質改善で症状を改善させる方法です。信頼できる動物病院でよく相談しながらそのこにあわせたケアをしてあげましょう。また、愛犬のもつバリア機能が正常になるよう体質改善をめざし、食事を見直したりストレスのかからない環境や生活スタイルを心がけましょう。
まずは、お部屋の環境を見直しましょう。ホコリがたまると、湿気がたまります。湿気がたまるとカビが繁殖しやすくなります。そういった場所が大好きなダニが繁殖します。
こまめなお部屋の清掃、湿気・カビ対策、ダニ対策、フィルターつき空気清浄機を置く、愛犬のベッド・マットなどを常に清潔にするなど、できるだけハウスダストなどのアレルゲンに触れない生活環境をつくることが大切です。
アレルゲンであるハウスダストのなかでも一番厄介なのがダニです。種類によっては人や動物を刺しますし、死骸やフンを吸い込むことでアレルギー・ぜんそくなどのアレルゲンになります。ダニは動物の毛、フケ、食べ物のカス、カビなどをエサとし、メスは一生に約100個の卵を産み、すごい繁殖力で湿度の高い梅雨時期から増え始めて夏から秋がピークになります。
家庭には30種類以上のダニがおり、チリダニやコナダニなどが多いようです。人や動物を刺したりしませんが、発生をそのままにしておくとそれをエサとするツメダニやイエダニが繁殖してしまいます。ツメダニやイエダニは人・動物を刺します。強いかゆみがでて、皮膚に赤い斑点ができます。これらがいったん繁殖してしまうと駆除がやっかいなので、チリダニやコナダニの発生・繁殖を予防することが大切。
ダニ捕りシートなどは食品添加物などでダニを誘引し、粘着させて死滅させるというもので、ダニの死骸なども飛び散らず赤ちゃんや動物、環境にもやさしく、置くだけで簡単なのでおすすめです。湿気のあるところ、ベッドやソファ、カーペット、押入れの中、ぬいぐるみなど暗く暖かいところを好みます。空調のきいた室内では1年中をとおしたダニ対策が理想的です。
アトピーの犬は、皮膚のバリア機能に問題がある場合が多いようです。皮膚のバリアがうまく機能していないということは、外部から細菌などの病原体や異物が侵入しやすくなるということです。アトピーの犬の皮膚の状態はさまざまで、いろいろな症状が混ざっていることもあるため、愛犬に使用するシャンプー類やシャンプーの頻度等は、信頼できる動物病院でよく相談して選び、皮膚の状態にあわせて使用することが大切です。
犬のシャンプーを香りやブランドで選んでいませんか?それが原因で皮膚トラブルをおこしている可能性もあります。人間用のシャンプーを犬に使うのは論外です。またシャンプーのすすぎ残しのないように気をつけることと、皮膚の保湿も大切です。直接皮膚にあたるものや洋服にも気をくばりましょう。